テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
テニス肘とは、ラケットなどを振る動作を繰り返すことで肘の外側に痛みが出るスポーツ障害です。
肘外側の痛みが、手首を動かした時に出る・強くなる点が特徴的です。テニス愛好家によく見られることからこの名がついていますが、ゴルフ・バドミントン・剣道などをする人にも発症します。
疾患名としては、上腕骨外側上顆炎に分類されます。
テニス肘の症状
肘の痛みは、ドアノブを回す、タオルを絞るといった手首を動かす動作をした時に出る・強くなります。
悪化すると、肘を伸ばして物を持ち上げる動作でも痛みが出るようになります。
症状
- 肘の外側の痛み
- 前腕のだるい感じ
- 肘の熱感
テニス肘の原因
テニス肘は、ラケットを振るような動作の繰り返しによって、肘を酷使することで発症します。特に、中年以上になると肘の外側上顆(肘外側の骨の出っ張り部分)に異常な血管・神経線維ができることから、よりテニス肘のリスクが高くなります。
ラケットを振る以外にも、他のスポーツの同じような動作、仕事などで日常的に重い物を持つ・赤ちゃんを抱っこするといったことでも発症することがあります。
重症度については、以下のような分類があります。
重症度チェック
Grade1
テニスのプレー中またはプレー後に痛みがあるが、プレーの質には影響がない
Grade2
テニスをプレーすることは可能だが、プレーの質に影響がある
Grade3
テニスだけでなく、日常生活にも影響が出ている
テニス肘の検査・診断方法
テニス肘が疑われる場合には、主に以下のような検査を行います。
レントゲン検査
骨の異常、他の整形外科疾患の除外のために行う検査です。
また重症化したテニス肘の場合は、炎症によって沈着したカルシウムが、もやもやした影として認められます。
トムセンテスト
肘を伸ばし、手首を上方へと反らした状態を作り、医師が下方向へと力を加えた場合の肘の外側の痛みの有無を確認します。
チェアテスト
伸ばした片手で椅子を持ち上げてもらい、肘の外側の痛みの有無を確認します。
中指伸展テスト
片手を甲を上にして伸ばし、医師はその手の中指を下方へと押します。患者さんは医師の力に反発するように、中指を上方へと持ち上げます。その時の肘の外側の痛みの有無を確認するテストです。
テニス肘は一生治らない?治療方法・安静期間
テニス肘は、比較的自然治癒しやすいスポーツ障害と言えます。ただ、一度ダメージを受けた腱が再生することはありません。また、急性期には安静に努める必要があります。安静期間は通常、1~2ヶ月ほどです。
適切な対応・治療によって、ほとんどのケースで完治が期待できますので、放置せず、お早目にご相談ください。
薬物療法
痛み・炎症に対する治療として、湿布の外用、非ステロイド性消炎鎮痛剤などのお薬を使用します。
装具療法
サポーターを装着することで、肘の外側にかかる負担を軽減します。
ステロイド注射
強い痛みに対しては、肘に対する直接のステロイド注射が有効です。
リハビリテーション
痛みが落ち着いたら、リハビリテーションを行います。
ストレッチや筋力トレーニング、肘への負担を軽減するフォーム・動かし方の習得などにより、肘の機能の回復を目指します。
ゴルフ肘
ゴルフ肘とは、ゴルフのスイングの繰り返しによる負荷により、肘の内側に痛みが出るスポーツ障害です。体をひねる動作があるため、身体のバランスが崩れた状態になりやすく、その分、肘の負担も大きくなるのです。
ゴルフ肘とテニス肘の違い
もっとも分かりやすい違いとして、肘の痛む位置が挙げられます。
ゴルフ肘では肘の内側が、テニス肘では肘の外側が、それぞれ痛みます。また、一般的にはゴルフ肘の方がテニス肘より治りにくくなります。
ゴルフ肘の症状・原因
症状
初期には、肘の痛みはスイングをした時や練習の後などに現れます。その後、進行すると手首をひねる、重い物を持つといった日常的な動作の際にも痛みが出るようになります。
- 肘の内側の痛み
- 肘の腫れ
- 肘の熱感
原因
クラブを握った状態でスイングすると、この時に働く手根伸筋の付着部である肘の内側(上腕骨内側上顆)に負荷がかかります。ゴルフ肘では、この動作の繰り返しによって炎症・痛みが引き起こされます。
特にビギナー~中級レベルの中高年によく発症します。スイングの際の身体の開き過ぎ、クラブを握る力の入り過ぎ、体幹を使わない手打ちなども、テニス肘の発症リスクを高めます。
ゴルフ肘の検査・診断方法
主に、以下のような検査を行い、診断します。
レントゲン検査
必ず行う検査ではありませんが、骨の異常の有無の確認、他の整形外科疾患の除外のために行います。
トムセンテスト
肘を伸ばし、握りこぶしをつくるようにし、その状態を維持するように負荷をかけるテストです。
ゴルフ肘の治療方法
まず最優先にすべきは、安静です。
その上で、以下のような治療を行います。
薬物療法
湿布の外用、非ステロイド性消炎鎮痛剤の内服などにより、痛み・炎症の軽減を図ります。
装具療法
サポーター、肘用ベルトなどの使用により、肘にかかる負担を軽減します。
ステロイド注射
痛みが強い場合には、ステロイドの肘への注射が有効です。
リハビリテーション
痛みが落ち着いたら、肘の筋肉や腱のストレッチ、筋力トレーニングにより、肘の筋力・柔軟性の回復を目指します。また、温熱療法なども有効です。
野球肘
野球肘とは、主に投球動作の繰り返しによって肘の痛みを引き起こすスポーツ障害の1つです。
中でも小中学生の野球少年・少女に好発することから、「リトルリーグ肘」とも呼ばれます。ポジション別では、もっとも多いのが投手、次に捕手となっています。
野球肘は大人にも
発症する?
発症率が低いというだけで、大人が野球肘になるというケースも少なからず存在します。
野球肘の3つの種類
内側型
投球時、肘の内側が痛むタイプの野球肘です。この3つの中では、もっともよく見られます。
内側であっても痛むポイントには個人差があります。受診の際には、どのポイントが痛むのかをお伝えいただければ、診断に役立ちます。
外側型
投球時、肘の外側が痛むタイプの野球肘です。内側型よりも重症化しやすく、軟骨が遊離し関節内を動き回るケースもあります(関節ねずみ)。
後方型
ボールを投げ切って肘が伸びた(リリース~フォロースルー)時、肘の後方(二の腕側)に衝突するような痛みを感じるタイプの野球肘です。
疲労骨折を起こすこともあります。
野球肘の症状をチェック!原因は?
症状
- 投球の際、投げ切った時などに肘が痛む
- 投球をやめるとその日のうちに痛みが引く
- 肘の痛みでフォームや制球がばらつく
- 投球数の多い日に痛みが出る、強くなる
- 投球後は痛みが引いていたが、慢性化してきた
- 全力投球をしているのにスピードが出ない
初期には、投球をやめると痛みが軽減します。痛みが引いたからといって翌日も投球するといったことはせず、安静にし、お早めに当院にご相談ください。
原因
繰り返しの投球動作により、徐々に肘にダメージが蓄積することで発症します。また、いわゆる「肘が下がっている」投げ方は、野球肘の発症リスクを高めると言われています。
なお、ソフトボール、テニス、やり投げといった野球以外のスポーツにおける投げる・ラケットを振る動作の繰り返しを原因として発症するケースも見られます。
野球肘の検査・診断方法
身体所見
医師が肘関節の可動域、痛む部位などについて確認します。
画像検査
損傷部の正確な維持、状態などの確認、他の疾患の除外のために、以下のような検査を行います。
レントゲン検査
骨の異常の有無や関節ネズミの確認、変形性関節症の除外のために有効となる検査です。
内側型・外側型・後方型の鑑別も可能です。
超音波検査
筋や腱、靭帯、軟骨の異常を確認することができます。
レントゲン検査では見つかりにくい肘離断性骨軟骨炎肘離断性骨軟骨炎の早期発見にも適しています。
CT検査
三次元の立体画像で、骨の異常の有無をより詳細に把握することが可能です。
関節ねずみの変形の程度も正確に分かります。
MRI検査
筋や腱、靭帯、骨、軟骨の状態を確認することができます。
超音波検査より詳細な情報を取得することが可能です。
野球肘の治療方法
内側型・外側型・後方型のそれぞれについて、治し方をご紹介します。
内側型
多くの場合、数週間~数カ月の投球の中止によって、痛みは治まります。
痛みが落ち着いてからは、フォーム・肘の使い方の見直し、肘の内側を中心とした筋力トレーニング・ストレッチなどを行います。
重度の場合には、手術が必要になることもあります。また近年では、PRP療法や体外衝撃波治療などを行う医療機関も増えてきました。
外側型
痛みが治まるまでの必要な安静期間は数週間~1年と幅があります。
痛みが落ち着いてからは、フォーム・肘の使い方の見直し、肘の筋力トレーニング・ストレッチなどを段階的に行っていきます。
保存療法で十分な効果が得られない場合には、骨軟骨柱移植術、関節鏡視下病巣掻爬術といった手術が行われます。
後方型
安静にして痛みが落ち着いてから、フォーム・肘の使い方の見直し、肘まわりの筋力トレーニングやストレッチを開始します。
場合によっては、骨棘を取り除く手術、遊離体を摘出する手術などが必要になることもあります。
テニス肘・ゴルフ肘・野球肘に対するリハビリテーション
保存療法を選択する場合も、手術を選択する場合も、日常生活・スポーツに早期復帰するためにはリハビリテーションが欠かせません。
当院では、低下した運動機能を取り戻すだけでなく、再発防止を考慮したリハビリテーションを行います。お一人おひとりに合ったリハビリ計画を立案いたしますので、安心してご相談ください。
テニス肘・ゴルフ肘・野球肘でよくあるご質問
野球肘を放置しているとどうなりますか?
野球肘を放置していると、骨・軟骨が剥離したり、可動域の減少・ロッキングが起こったりする可能性があります。
初期には投球をやめると痛みが引くため甘く見られがちですが、実際に野球肘を放置したために競技人生を終えてしまう選手もいます。「投げると痛い」ということが異常であることを認識し、痛みが出た場合にはすぐに投球を中止して、受診するようにしてください。
テニス肘は自力で治すことが出来ますか?
テニス肘については、多くの場合自然に治ります。ただ、だからといって整形外科などで治療を受けなくていいというわけではありません。また、テニス肘だと思っていたら他の疾患だったということもあります。
早く、確実に治すためには、整形外科でまずは診断を受け、薬物療法やリハビリテーション、装具療法など、適切な治療に取り組むことが大切です。
テニス肘・ゴルフ肘のマッサージやストレッチをしてもなかなか治らず、痛みがとれない場合はどうしたらいいですか?
肘の痛みの原因の1つに、中年期以降で発生する肘の異常な血管・神経線維が挙げられます。その場合、この異常な血管を減らすカテーテル治療が有効になることがあります。
カテーテルを使って薬剤を直接注入し、異常な血管を減らすという新しい治療です。